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公開講座「経腸栄養」レポート

東口燻u先生へのご質問とご回答

Q1
多発性骨髄腫の末期の患者。経口摂取出来ています。全がゆ食、すべて半量850カロリーでプロッカー毎食1ヶ240カロリー摂取しているも、総タンパク11、2、アルブミン1,2しかありません。GFOは有効でしょうか?有効であれば使用したいと思います。(K病院 Iさん)
A1
有効です。GFOには腸管絨毛上皮の萎縮抑制、増殖促進およびそれに伴う免疫能の促進という効果が期待できます。少量の投与で十分な効果が得られるため経口摂取低下時も有効な栄養手段と考えられます。但しカロリーとしては多くありませんのでGFOは根本的な病状の改善に用いるべきでしょう。
Q2
GFOについてですが、長期に食事を欠食していた患者さんが経口にかわるときにGFOの1回の食量と期間をおしえてください。(無記名)
A2
グルタミン3g、水溶性ファイバー5g、オリゴ糖2.5gを1回量として1日3回の服用でよいと思われます。
Q3
現在、肺がんで予後6ヶ月なのですが、骨メタで便失禁しスキントラブルが発生し、症状を繰り返しています。その方でもGFOは効果あるでしょうか?自分で食事摂取しています。(O病院 Aさん)
A3
便のなかの病原性大腸菌群を減らすことでスキントラブルの感染リスクが減る可能性があります。また、便の異臭もへり患者の不快感も解消されることが期待できます。GFOは消化管機能を改善しますので便秘、下痢ともに効果があります。
Q4
患者のための医療であるべきか、国の方針は患者不在の経済優先となっているようです。今後の医療行政の方向はいかがでしょうか?(O病院 ER Hさん)
A4
難しいご質問です。国もそうかもしれませんが、医療提供側にも問題があるように思います。例えば、在院日数の短縮は単なる早期退院(あるいはほぼ無理やりに)と考えられておられる施設もたくさんあります。これの元は確かに国の診療報酬の改正あるいはDPC導入ですが、それに単純に反応しているきらいもあるように思います。本当は早期に社会復帰が可能となる方策をめぐらせ、それを実践して正しく患者さんが早く帰れるようにすべきですよね。このような医療は米国がそうであるように必ずしっぺ返しがくるように思われてなりません。是非とも皆さんは正しい本来の医療を心がけていただきたいと思います。
Q5
今現在、レスピレーター装着中の患者の嚥下再開に臨んでいますが、本人は食べたがっていて食べたのですが、医師から、どのような原因で危険を伴うのか、調べるようにと言われ、また、嚥下の筋肉を調べろと言われました。よく分からないので教えてください。(S病院 看護師 Tさん)
A5
気管切開は
・嚥下時の喉頭の挙上が障害される
・喉頭内に侵入するものを自力排除できない
・嚥下時に声門下圧が上昇しない
・気道の知覚・咳嗽反射閾値が上昇する
・喀出力が弱まる
・カフ付きカニューレは食道を圧迫することがある
などの嚥下には不利な要素を多く認めます。嚥下の筋肉について 以下に嚥下に関与する筋と支配神経を記載します。

舌筋:
舌下神経 上・下縦舌筋、横舌筋、垂直舌筋、オトガイ舌筋、舌骨舌筋、茎突 舌筋

口蓋筋:
三叉神経 口蓋帆張筋・下咽・迷走神経 口蓋帆挙筋、口蓋垂筋、口蓋咽頭筋、口蓋舌筋
舌骨上・下筋:三叉神経 顎二頭腹筋前腹、顎下骨筋  顔面神経 顎二腹筋後腹、茎突下骨筋
舌下神経 オトガイ舌骨筋   頸神経ワナ 胸骨下骨筋、胸骨甲状筋、甲状舌骨筋、肩甲舌骨筋

咽頭筋:
舌咽・迷走神経 耳管咽頭筋、茎突咽頭筋、上咽頭収縮筋、中咽頭収縮筋、 下咽頭収縮筋
などです。
ちょっと難しすぎるかもしれませんね。
Q6
経口摂取ができるのですが、逆流性食道炎があって、誤嚥性肺炎をくりかえし、精神薬の投与により、腸ぜん動も悪くイレウスを起こしやすい患者さまで摂取量を少なくして栄養を取り入れる方法はありませんか?教えてください。ALB2,9、アルツネート摂取しています (O病院 看護師 Kさん)
A6
誤嚥性肺炎を繰り返し、栄養状態の改善が望めないのであれば、経口摂取が可能といえども誤嚥がなくなるまではPEGを増設して経腸栄養管理をすることが必要かもしれません。チューブ先端を空腸に留置することで逆流性食道炎も少なくなると思われます。また少量で高カロリーのアイソカルEXなどを考えてみてもいいかもしれません。
Q7
悪液質へのギアチェンジの目安と治療方法の変換方法を簡単に教えてください。(S病院看護師 Kさん)
A7
高度がん進展による全身衰弱、コントロール不能な胸水、腹水、全身の浮腫をきたした際を、私たちは真の悪液質とよんでおり、細胞レベルでエネルギーや水分栄養素などの交換が困難になる時期と考えています(最終的なギアチェンジの時期)。一般にはお亡くなりになる2週間ほど前がこれに相当しますが、感染症等の合併症があると変動します。ギアチェンジ後はカロリー、水分量、電解質なども大幅に減じます。
Q8
緩和ケア食について、具体的にどのような食事の提供をしているのですか?(O病院 看護師 Tさん)
A8
好きな食事、食べられる食品を個人対応で提供しています。
Q9
緩和ケア食について、具体的に教えてください。特に栄養補給時とギアチェンジ時の栄養成分の違いについて(O病院 Aさん)
A9
緩和ケア食は自由に摂食していただくもので、基本的にカロリーなどを気にすることなく好きな食事、食べられる物をということになります。例えば「ステーキが食べたい!」ということであればその希望にそえるよう対応させていただいてます。ギアチェンジ時(悪液質を伴う場合)もあくまでも経口投与を基本とし、経口摂取ができない場合は本人・家族の希望を優先し、無理に強制的な輸液・栄養補給はしません。水分投与量や必要カロリーも悪液質を伴わない場合の30〜50%%に制限します。しかし、ビタミン・微量元素は一日必要量を投与します。いずれにしても末期がんだからといって決して栄養管理を疎かにせず、十分な栄養管理を行い、最後のときを安らかに迎えていただくことを目標としていくことが必要です。
Q10
経口からの栄養剤で、患者さまが「おいしくない」とおっしゃった場合、どのようにお勧めしていますか? (N病院 栄養管理部 Kさん)
A10
当院は、十数種類の濃厚流動食を常備し、エネルギー指示意外に特に指示がない限り「おまかせ○○kcal」とオーダーがあり、濃厚流動の味に飽きを出さないようにローテーションにて提供をしております。
Q11
ALB低いが体重増えていく慢性期の方がいます。どういった生理学的機序・代謝が行われているのでしょうか?(O病院リハビリテーション部 Sさん)
A11
栄養素が脂肪合成に向かい体蛋白として利用されていないことが考えられます。Alb合成を阻害する因子として、肝障害や、エネルギーに対する相対的な投与蛋白不足、粗悪な蛋白質(アミノ酸)、ビタミン・微量元素欠乏の確認をされてはいかがでしょうか。
Q12
ガンでなくても悪液質のような状況になった時はカロリーを減らすべきでしょうか?(O病院 看護師 Yさん)
A12
一般的な悪液質症候群の定義は、がんに限らず慢性疾患に関連した全身的な消耗状態および栄養不良状態をさしますが、これは栄養投与が充足されていてのことが条件です。大切なことは投与する栄養素やエネルギーが生体にとって有益な状態であれば投与すべきと考えます。それが過剰投与ならば減じることになります。すなわち、投与エネルギーを減じるならば代謝栄養の観点からエネルギーを減らすことが患者に有効であることを見極めたうえで慎重に減量することが肝要です。
Q13
全員に栄養管理できるシステムはどういったものか教えていただきたいです。(N病院 栄養課 Oさん)
A13
藤田保健衛生大学七栗サナトリウムで用いられているNST支援システム(KOKURAN NSTというグリーム社から発売されているソフトです)により全患者さんの栄養管理が可能となります。
Q14
NST療法士をとりましたが、看護師としてどう活動したらいいのか分かりません。NSTに関して、看護師が患者にもっと関わらなければと思っています。東口先生はなにが大切だと思われますか?(O病院 Mさん)
A14
看護師さんは常に、一番患者さんの状態を把握していることから、他のスタッフへの的確な情報提供ができる役職です。その情報がNSTスタッフ各々の専門性を発揮するのに合理的かつ確実に利用されるような体制をつくれば看護師さんのNSTへの関わりが明確になるように思います。また、その非常性も認識されることでしょう。患者サイドに立った医療を展開する機軸になるのが看護師さんです。
Q155
GFOの固形(錠剤)はありませんか? (O病院 外科 Oさん)
A15
今の所ありません。
Q16
当院でもGFOを使用していますが、高齢便秘患者に投与する場合、1日何包必要か?延々と続けるのか?また、短腸症候群にも効果がでると聞きましたが、データはありますか?(O病院 外科 Oさん)
A16
高齢便秘患者、短腸症候群におけるGFO投与のエビデンスがもちあわせておりません。しかし、GFOの作成コンセプトや適応患者での有効性をみるかぎり、いわゆる慢性疾患の維持療法においても効果は十分期待できるのではないかと考えます。投与量ですが、GFO一日3包をまず投与して、食事あるいは経腸栄養剤内の食物繊維に合わせて投与量を変更していきます。短腸症候群に対してはGFOは理論上極めて有用です。症例単位ならばGFOで良くなった症例の報告はあります。
Q17
緩和ケア期の栄養管理について、栄養基準について教えてください。(微量栄養素についても) (O病院 Aさん)
A17
悪液質を伴う場合とそうでない場合によって分けられます 【悪疫質を伴わない場合】
@水分投与量:25〜35mL/kg体重/日
A必要エネルギー(kcal/日):基礎代謝消費量(BEE)×活動因子(AF)×傷害因子(SF) BEE=ハリスベネディクトの式より算出 AF=1.0〜1.8 SF=1.0〜2.0(担癌症例1.2以上)
Bアミノ酸(蛋白質)投与量(g/日):体重(kg)×SF
C脂肪投与量(g/日):必要エネルギーの20〜50%(0.5〜1.0g/kg体重)経静脈栄養における脂肪投与速度:0.1〜0.2g/kg体重/時
D糖質投与量(g/日):(必要エネルギー)−(アミノ酸投与量)−(脂肪酸投与量)NPC/N(非蛋白カロリー/窒素量):150〜200kcal/日;腎不全では300〜500kcal/日
Eビタミン・微量元素投与量:1日必要量原則経口投与→やむを得ない場合のみ経腸・経静脈栄養考慮 【悪液質を伴う場合】経口摂取可能症例

1.自由摂食:好きな食事・食べられる食品
2.本人の理解承認が得られる場合
@ビタミン・微量元素栄養剤
A高脂肪高蛋白栄養剤(肺転移・呼吸障害合併例)
BGFO(摂食不良症例、免疫能低下例、麻薬投与例)
C分岐鎖アミノ酸製剤(筋萎縮・四肢だるさ発症例)
経口摂取不能例
1.本人・家族の希望
  @強制的な輸液・栄養補給実施せず
  A間欠的輸液(末梢静脈栄養ヘパリン/生食ロック)
  B持続的輸液(末梢静脈栄養/中心静脈栄養:長期ルート保持困難例)
  2.水分投与量:15〜25mL/kg体重/日(およそkg体重あたり20mL/日:500〜1000mL/日)
 注)口渇対策:輸液に頼らず口腔ケアをかねてお茶スプレー(カテキン効果)を実施
3.必要エネルギー(kcal/日):5〜15kcal/kg体重/日(およそ200〜600kcal/日)
4.投与栄養素:@糖質が中心A必要に応じてアミノ酸(分岐鎖アミノ酸)・必須脂肪酸を少量投与
5.ビタミン・微量栄養素:1日必要投与(口内炎、褥そう発生予防のため) 多くの論文を書いていますのでできればそちらも参考にしてください。この紙面では書ききれません
Q18
現在、中心静脈栄養を行っている患者がいます。小腸が1Mくらいです。PEGよりGFOと粘調剤を使用し、半固形にして注入しています。ずばり効果はありますか?(M病院)
A18
ずばり効果があります。小腸の有する本来の機能を最大限に生かさない手はありません。小腸のエネルギー基質の投与により粘膜細胞増殖によるBTの抑制や腸管由来ホルモンの産生、免疫担当細胞の賦活が期待できると思います。
Q19
麻酔使用時の便秘に対し、GFOのどれくらいの期間、どのように使っているのか、また投与量を教えてください。 (O病院看護師Iさん 、B病院 栄養Sさん)
A19
通常の患者さんと同じようにグルタミン3g、水溶性ファイバー5g、オリゴ糖2.5gを1回量として1日3回で投与しています。
Q20
GFOの請求はどうしていますか?(U病院 Yさん)
A20
Gハーフ食などのように病院食に付随したGFO投与の場合には食事療養費用で賄っています。しかし、一般の食事に加えて投与が必要な場合には、患者さんや家族の同意の上で患者さんに請求しています。
Q21
かぜをひいたとき(寝込んだとき)、ステーキを食べにいったり、焼肉を食べに行く人はいないと思います。つまり、人間は一万年の歴史のなかでかぜなどの炎症性もしくは消耗性の病気にかかったときに、高カロリー・高たんぱく食は摂取しない選択をしてきているのだと思うのですが、NSTで、ハリス・ベネディクトで計算するとまさに上記のような状態の人に高カロリー・高たんぱくを与えるのですが、このディスパンシーをどう考えたらよいのでしょうか? (O病院 内科 Nさん)
A21
一般的に、急性期の代謝は亢進している時期には、エネルギー需要が亢進しますが生体内ホルモンなどによりエネルギー利用能が低下しています。この時期は、代謝能力に応じたエネルギーを投与し、代謝が安定した時期をから累積した負のエネルギー量を充足するよう栄養管理を行うことが肝要です。要するに炎症などのある急性期には循環動態を第一に考え、急性期を乗り越えた後にこれまでマイナスであったエネルギーバランスを改善するようにすることがコツです。但し、長く急性の状態が続く場合やそれが予想される場合にはカロリーや種々の栄養素を投与していくこともあります。
Q22
脳外科の患者さんへの経腸栄養で、ドクター指示でマーゲンチュウブから膿流注入、400ML/回程度の量を1回につき4時間かけて投与を命じられるときがあります。それほど時間をかける必要があるのでしょうか?かえってじょく瘡の危険性が高まったり、患者もきついのではないかと思うのですが。(O病院 看護師 Tさん)
A22
術後早期では、消化管運動が低下し胃内容物の逆流による肺炎を危惧されてのことと推察されます。脳外科術後経腸栄養導入時期は、少量から開始し100ML/h以下での持続投与が行われますが、維持量になりましたら200ML/hまで速度を調節することが可能です。投与中はギャッジアップ状態ですが、2時間おきの体位変換は通常通り行います。また、栄養剤を半固形化して投与することもお役に立つと思います。あくまで胃からの投与の場合です。直接的な経腸栄養の場合には100ML/hが限界です・・・これを超えると下痢の原因となります。経腸栄養で褥瘡が増えるということは理学的な管理上の問題であり、そのような患者さんはTPNではより大きな褥瘡ができます。
Q23
麻薬をつかっていて緩下剤を使用しないでできているのは、どうしてですか?GFOの使用ですか?(S病院 Hさん)
A23
緩下剤を全く使用していないわけではありませんが、GFO投与群、非投与群でみると明らかに緩下剤の使用量はGFO投与群で少なく、使用量に大きな差がでています(当科では麻薬投与にGFOの投与はほぼルーチンに行っています)。ただし、オピオイドの種類、投与経路によっても消化器症状の出現頻度は変わるため今後この解析が必要とされます。麻薬の便秘の発現機序は、μおよびσ受容体を介した、腸管そうでのアセチルコリン遊離抑制によります。そのため小腸における消化・運動性の低下による小腸内容物排出時間の延長、、大腸での運動性・水分吸収の低下による大腸内容物の排出時間の延長および便の固化、さらに肛門反射の低下、緊張の上昇よると考えられます。GFOの効果は小腸、大腸での機能の正常化と腸管内の細菌そうの正常化などによるものと考えられます。
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