報告者 大分健生病院 内視鏡室 佐藤雅子
毎年海の日の連休の間に開催される当院の公開講座も、今年で8回目となりました。
当日まで、お天気の心配をせずにこの会が開催されるのは今回が初めてで、まさに講演の先生方の晴れ男・晴れ女のお蔭!と感謝しております。
倉田なおみ先生は、世界最初に内服薬の簡易懸濁法を開発された先駆者です。
先生のご講演も8月の宮崎県でついに全国に及び、まさに“引っ張り蛸”(ご趣味はスキューバーダイビング)です。
今や多くの病院で普及されている簡易懸濁法ですが、「薬のプロ」が患者や介護する者の「声」を率直に聴き、臨床にマッチするように切磋琢磨してこられた成果だと強く感じました。
経鼻胃管や胃瘻カテーテルからの「薬剤の注入」は、薬剤の特性を熟知することにより、カテーテルのつまりや薬効の低下を防ぐことができます。
ポイントとして、
(1)適温(55℃程度)で溶かすこと
(2)溶かす時間を短くすること(10分程度)
(3)薬の注入後のフラッシュ(湯の注入)
(4)OE錠(溶けやすく飲みやすい口腔内崩壊錠)の活用など簡易懸濁法の基礎から極意
まで、スピーディにお話ししていただきました。
当院でも簡易懸濁法を取り入れておりますが、薬剤師を含めたNST(栄養サポートチーム)が、定期的に薬剤注入に関してトラブルがないかをチェックし、吟味していくことが重要だと思いました。
西山順博先生は、臨床現場から滋賀ネットワーク作りに取り組まれています。
著書「胃ろうのケア はじめの一歩」や「胃ろう評価スケール・胃ろうケアフローチャート」などを通して、コメディカルにもお馴染みの人気のある先生です。
胃瘻栄養患者の在宅管理を勧めていく上で必要なことは、日常的な胃ろうカテーテルの管理とスキンケア、定期的な栄養評価、口腔ケアと摂食嚥下状態のチェックなどです。
栄養評価は、触診などで、皮下脂肪の減少や筋肉の消失、浮腫はないか、腹水はないかなど主観的包括的評価(SGA)を行うことが主流となります。
定期的に血液検査などによる客観的栄養評価(ODA)を行い、主観的評価と合わせて総合的に栄養評価を行っていくことが理想です。
西山先生の在籍する滋賀PEGネットワーク及び滋賀県NSTネットワークでは、在宅胃瘻栄養患者の理想的な栄養管理をすることを目標に「地域連携パス」を用いて、情報を共有しています。
NST(栄養サポートチーム)が地域ぐるみ(滋賀の県や市の単位)で広範囲に取り組まれていることに感動しました。
また、PDN通信35号でも紹介されていましたが、医療現場において看護師ではない介護職員が胃瘻栄養の患者により深く関わる機会(栄養剤を注入するなど)が増えていきます。
これにより看護師は介護職員に向かって正確に指導し、適切にケアが行えるようにチェックをしていくことが大切です。
PEGに関わる医師やコメディカルスタッフは、最新の知識を得るように常に努力していくことが重要だと再認識した会でした。
ご講演の倉田なおみ先生、西山順博先生、楽しく元気になれる講演をありがとうございました。
また参加して下さった皆様、協力していただいたメーカー、業者の方々に感謝致します。
(2011年7月17日)
第8回 大分健生病院公開講座「経腸栄養」レポート